Source: roland.com
まるでステルス戦闘機のように、あらゆる面を斜めにスパッと切り落としたような幾何学的でモダンなルックス。でもひと目みればそれが「グランドピアノ」とわかる。これはRolandが300年続くグランドピアノの定義を問うような作品だ。

Rolandは2015年に「Roland Digital Piano Design Awards」を通じて、世界中のデザイナーに固定観念にとらわれない未来のピアノのビジュアルを募集するチャレンジを行った。 応募者には、「究極のコンサート用グランドピアノ」のデザインを設計するという課題が課せられた。
その中で大賞に輝いたのが、韓国籍のプロダクトデザイナーJong Chan Kim氏による、この「Facet Grand Piano」だった。
それから数年間、Rolandの技術チームはこのデザインコンセプトをもとに、あるべき機能やビジョンの実現の方法について検討を重ね、2019年には実際にプレイ可能なモデル「GPX-F1 Facet」の開発を開始。そして、ついに2020年のCESにおいてワールドプレミアとして発表するに至った。
GPX-F1 Facetにとっては、従来のアコースティック・グランドピアノのように弦を収納するためのスペースは不要であり、この部分はグランドピアノとしての象徴的なデザインのために使われている。その代わり、同じ面積だけ確保されたベースユニットに、ピアノ・モデリングサウンドを再生するスピーカーユニットが収納されている。
フレーム内にも収められたフラットパネル・スピーカー、ピアノのハンマーが弦を叩く際に発生するノイズや倍音を表現するための近接場スピーカー、音を観客に反射させるためのトップボードとあわせ、緻密な音響設計がなされている。

従来、譜面台が設置されていた場所には、Android OS搭載の大きな画面がビルドインされ、デジタル楽譜やオンラインビデオレッスンなどのさまざまな音楽コンテンツを表示する。Amazon Alexaとの連携も可能だ。
グランドピアノのコンサートにおける存在感をみごとに残しながらも、モダンなグランドピアノのあり方を表現した「GPX-F1 Facet」。グランドピアノの象徴的な形をただの飾りではなく音響設計に取り入れ、有効に利用している点が特にすばらしいと感じる。
まだ量産ではなく、あくまでコンセプト・モデルではあるが、近い将来このようなデジタル・グランドピアノがコンサートの主役になる日は近いのだろう。
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